武  蔵  花  暦




ここでは武藏学園の江古田キャパス(東京都練馬区豊玉上)の樹木や花、景観を紹介しています。都心(池袋から電車で7分)に近い2万坪以上のキャンパスのほぼ中央に濯川(もと千川上水の中新井分水)が流れ、大正11年の武蔵高等学校の創設以来80年にわたり、教職員や父兄、生徒、同窓生たちによって、教育環境に相応しく、種々の樹木が植えられ、大切に保護されてきました。その一方で、秋には、たくさんのドングリをつける、幹周り3mに近いクヌギ(椚、櫟、橡)やコナラ(木楢)に代表される、武蔵野の雑木林や屋敷森の面影を所々にとどめています。これらの木々や花と川の季節の映り替わりを写真レポートにしてみました。



武蔵花暦2 桜  花 青 葉・若 葉 名 木・大 木 実 生・ 種
紅 葉 14年 紅 葉 15年 紅 葉 16年 紅 葉 17年 自然観察写真



2月下旬 白梅(高校グラウンド北)

2月中旬 紅梅(濯川中の島)






3月下旬 ヒイラギナンテン 柊南天 (濯川水門前) メギ科 原産地 中国など。葉はヒイラキのようで、多数の黄色い小花を付け房になつて垂れ下がる。秋には実が黒紫色に熟す。

3月下旬 ヒュウガミズキ 日向水木 (濯川欅島周辺) マンサク科 原産地 日本。淡い黄色の花は下向きに垂れる。実は熟すと裂け、黒い2個の種があらわれる。木の生長は強い。






3月27日 ユキヤナギ(雪柳) Spiraea thunbergii 原産 日本など。花びら5枚。名は葉や枝が柳に似て花は雪に見えるところから名付けられた。

3月25日 ミツマタの開花。前年からの追跡観察。






4月2日 レンギョウ モクセイ科レンギョウ属  原産 中国。

4月2日 ボケ(木瓜) バラ科ボケ属 原産 中国。






4月4日 ヤマブキ 山吹 バラ科ヤマブキ属 原産:日本、中国。「花咲きて実はならねども長き日に思ほゆるかも山吹の花」(万葉集1860)。 ほろほろと山吹散るか滝の音 笈の小文 芭蕉。

4月4日 オトメツバキの開花。今年は例年より開花が早い。姿をしばしとどめてもらいたい。






4月10日 ドウダンツツジ(灯台躑躅) Enkianthus perulatus. ツツジ科 原産:日本。

4月初旬 コデマリ(小手毬) バラ科シモツケ属 小花が20ほど集まり球形になっている。原産:中国。






4月中旬 アメリカヤマボウシ(花水木) Cornus florida ミズキ科 贈った桜のお礼として、大正時代に渡来した。

4月下旬  ヤマボウシ(山法師) ミズキ科、ヤマグワともいわれる。中央に小さく集まっているのが花。原産:日本 中国。






5月6日 ハリエンジュ 針槐(ニセアカシア)マメ科 高さ15m 原産:北アメリカ

5月6日 ミズキ(水木) クルマミズキ Cormus controversa ミズキ科 高さ15m 原産:日本など






5月10日 マユミの花(真弓)ニシキギ科 昨年実をレポートしたもの。花は薄緑色で四枚、きわめて小さく1cmに満たない。 原産:日本 中国

5月9日 カナメモチ(アカメモチ)Photinia glabra バラ科 春、新芽と葉が鮮やかな紅色に色づき、秋には赤い実がつく。原産:日本






5月9日 ピラカンサ(バラ科 トキワカンザシ属)秋なると赤い実をたわわに付けているのをよく見かけるだろう。日本には明治中期に渡来したという。 原産:西アジア

5月12日 エゴノキ(エゴノキ科 Styrax japonica)白い小花が鈴なりにつり下がって咲く。江古田の地名のおこりの一説にこの木もあげられていて、地元のシンボルツリーともいえる。原産:日本。千川通りに面し、木の高さは7、8mあり、下から見上げると桜のようにも見える。以前は雑木林に普通にみられた木だが、今は、都市化により、地元でも少なくなった。江古田駅の地下道建設で、北口の入口に一本植樹されて今年は少し花をつけた。






5月16日 ウツギ(卯の花)Deutzia crenata 空木 ユキノシタ科 原産:日本。卯月に咲くところから名付けられた。万葉集にも24首あり、ホトトギス(150首以上)とともに詠われているものも多い。「皆人の待ちし卯の花散りぬとも鳴く霍公鳥我れ忘れめや」(1462)。これらを万葉学者の佐々木信綱は、明治29年に、唱歌「卯の花の匂う垣根に時鳥早も来鳴きて忍音もらす夏は来ぬ」を作詞した。

鳴き声「テッペンカケタカ」で知られるホトトギス(漢字は多数あり)は中国北部や朝鮮で繁殖し、夏鳥として渡来し、ウグイスの巣に託卵する。卯の花とホトトギスは、田植え時期をつげるものとして、古来人々に愛されてきたのである。「卯の花をかざしに関の晴着かな」曽良(奥の細道、白河の関)。ちなみに「目には青葉山郭公初鰹」(山口素堂)ではホトトギスはカッコウと表記されている。登場時期と姿が似ていたからかもしれない。ご本家の子規は「卯の花の散るまで鳴くかほととぎす」






5月20日 センダン 栴檀 14年版で冬の空に映える実を紹介したもの。 Mwlia azedarach var. subtripinnata センダン科。

センダンの花。薄紫の小花をいっぱいに付け藤の花を思わせるが、花期は短い。






6月5日 シモツケ 下野 Spiraea japonica バラ科シモツケ属。下野の国(栃木県)で見つかったことに由来する。 

6月17日 シモツケの白花。






6月17日 美容柳 別名 金糸桃。オトギリソウ科 中国原産。5センチほどの濃い黄色の五花弁をつける。白花のものもあるという。 

6月13日 別称ビオウヤナギ、未央柳。白楽天「長恨歌」の一部、大液の芙蓉、未央の柳」に由来。未央宮の柳に楊貴妃の眉を偲び情景を歌ったもの。






6月17日  アジサイ 

6月18 クチナシ(梔)Gardenia jasminoides アカネ科。一重のクチナシで、芳香をはなつ。果実はサンシン(山梔子)といわれ、古来より実に多くの症状に有効な薬剤として用いられてきた。また飛鳥、天平の頃から無害の黄色の着色料となつて、食品にも使われてきた。沢庵漬に使われたという。






6月18日  一重のものは大部分の花びらが六枚であるが、この木にはたまたま七枚のものが幾つか見られた。クチナシの香りは夜にもつとも強くなるといわれる。「薄月夜 花むくちなしの 匂いけり」 子規。 

6月26日 ヤエクチナシ。クチナシハは観賞用としてもよいものであるが、この八重のものは果実をつけないといわれている。






7月3日  コムラサキ(小紫)。Callicarpa dichotama 一般には紫式部といわれているが、実は同じ仲間で秋になると紫の実をつけ見映えが良いので、園芸店では紫式部として売られている。別名コシキブといわれ、これは小式部内待のことで、恋の名歌人和泉式部の娘、母が夫と赴任先の丹後に行ってしまったとき、小式部内待が歌会にでたところ、藤原定頼がまだ小娘で母親の援助なしではとうてい和歌は読めないだろうと、お母さんのところに使いは出したか、使者は帰ってきたか、とからかった。そこで、即座に、「大江山いく野の道の遠ければ まだふみもみず天の橋立」と詠んだと、金葉和歌集(550)に記されている。秋に青紫の実がたわわにみのったら小式部内待のことも思いおこしてあげたい。

7月4日 ハナゾノツクバネウツギ。花園衝羽根空木。スイカズラ科ツクバネウツギ属。この花は中国原産の台湾ツクバネウツギとAbelia unifloraとの交配による園芸種。アベリアとはラテン名。ツクバネは羽子板の羽根のこと、花の形を羽根に見立てたもの。






7月15日  ムクゲ(木槿)。Hibiscus syriacus アオイ科 フヨウやハイビスカスの仲間。原産 朝鮮半島、中国。夏の夜から早朝にかけて咲き夕方には花を閉じるといわれる。一夜花で、生け花より、一期一会のお茶の花としてとうとばれる。木は寒さにも強く、挿し木でふやせる。八重咲きなどの園芸種も多いという。  

ムクゲは韓国では国花となっているそうだ。木槿の花や樹皮は漢方薬の原料となる。花は木槿花(モクキンカ)、樹皮は木槿皮(モクキンピ)とよばれ胃腸炎や下痢、嘔吐などの特効薬だそうだ。また葉や実についても同じように薬効があるという。 道のべの木槿は馬にくわれけり 芭蕉。




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